ファラオの娘
ブルーレイでボリショイ版を見たのですが、単に探検家がアヘンを吸って見た夢の話だけではないような気がします。
太古のピラミッドの棺の中で眠るアスピシア王女、王女には相思相愛の貴族がいた。しかしエジプト最強の王は、国力拡大のために王女を他国の王に嫁がせる。
棺は「エジプト最強の王の娘」のものとなっているので、結婚する前に、アスピシアは死んでしまったのだと思う。
そして相思相愛の貴族もアスピシアと前後して、不幸な死に方をしてしまったのでしょう。
無念な思いで死んだアスピシアの思いが悠久の時を経て、相思相愛の貴族と同じ同期を感ずる探検家の夢に現れて、アスピシアの思いを成就させた。
こう考えるとアスピシア出現の時や帰棺の時の穏やかな音楽、投げキスをして迎え入れるような出現、投げキスをして満足そうな、しかし寂しそうな帰棺シーン、そして探検家が呆然と歩くシーンまでが、しみじみとして感じ入るものがあります。
もしかしたらピラミッドに避難するきっかけとなる突風からしてアスピシアの「思い」がなせる技かもしれません。
海賊(Le Corsaire )
海賊と言うと七つの海を股にかける荒くれ者という感じですが、この海賊の活動場所は地中海の中のイオニア海。それもプロローグとエピローグの2回難破している。格好いいけど情け無い海賊だなあ。
それでもって第一幕はアドリアーノの女奴隷市場で第三幕はパシャのオダリスクと「なんと悪趣味なバレエが存在するものだ」と最初見た時は思った。
尤も作品作成当時はこの環境が普通だったかもしれないけどね。
だからyoutubeなんかでも海賊の全幕ものは見たい気が起きなかった。
それでも、あの第二幕のグランパドドゥは好きだったけどね。
ところが、そのうち、第一幕の奴隷のパドドゥやオダリスクのパドトロワを見るうちに女奴隷を扱っている作品なのに面白く感じたり、美しく感じたりするようになってしまった。
ググってみたら、リッカルド•ドリゴ、レオ•ドリーブ、チェザーレ•プーニといった有名バレエ作曲家やオルデンブルグという作曲の才能ある公爵が作曲した曲が有名な踊りの曲として加えられているのでした(レオン•ミンクスの曲が入っているものもありますね)。
そのうちに海賊の全幕ものを見るのにも慣れてしまって、ランケデムの「金を払え」のマイムがないボリショイバレエの奴隷のパドドゥが物足りなく思えたりしています。
やはり素晴らしい作品ではありますね。
ついには、継ぎはぎのあるバレエ作品なので、バレエ団によりいろいろなバージョンがあってYouTube で探し回ったりするようになってしまいました。
ところでアドリアーノってググると海に面していないように見えるけど、当時は海に面するぐらい大きかったのかな?それもイオニア海から遠く離れていて、エーゲ海に近い。尤も、海は繋がっているけどね。
ドラゴンクウェスト
新国立劇場でドラゴンクウェストを観ました。ゲームをバレエ化して面白いかと名前を聞いた時思いましたが、実に面白い。元々バレエは神話や物語の題材が多いですし悪の化身も良く出てきますしね。
これに泣きあり、笑いありで、最後はハッピーエンド。クラッシック形式のバレエで華もあり、感動して夢中で手を叩いていました。
演奏も良かった。
自分が思うにアメリカあたりでやったらもっと声援がでるのではないかと思います。
新国立劇場は観客が大人し過ぎるのではないかと思いました。自分を含めて。
ただちょっと死ぬ役が多いかもしれません。
もっともラ•バヤデールでは寺院破壊と共にみんな死んじゃうんですけどね。
ブルーバード
眠れる森の美女にあるブルーバード•グランパドドゥ、赤頭巾ちゃんや長靴を履いた猫が1曲で終わっているのに、なんでブルーバードだけがグランパドドゥ形式なのか。
まず、ブルーバード、日本では青い鳥ですが、チルチル•ミチルが踊るわけではないんですね。
ブルーバードとフロリナ王女、ググると、魔法でブルーバードにされてしまったシャルマン王が塔の中に閉じ込められた愛しのフロリナ王女に会いに行く話。数々の困難を乗り越えて結ばれる2人ですが、このブルーバードの場面は2人の絶望的な境遇の中で、それでも愛を育んで行くという感動的な場面ですね。特に、フロリナ王女のバリェーションは、鳥のさえずりをフルートで表現し、その声を聞いてフロリナ王女が心をときめかせるという感動的な場面だと思います。耳に手を当ててブルーバードの声を聞く王女の姿に強い愛を感じます。
オーロラ姫の結婚式にも大変ふさわしい話であり、グランパドドゥ形式でも納得できる構成ではないかと思います。
コッペリア
ジゼル、ラ•バヤデールと見て、何か明るいものはと探したらコッペリアが見つかりました。
一幕のスワニルダのコミカルなバリェーションもいいですが、そのあとのマズルカやチャルダッシュ、スラブ変奏曲が好きです。
マズルカやチャルダッシュなんて白鳥の湖に出てくるのは知ってましたが、他の作品にも曲を変えて出て来るんですね。
コッペリアはコミカルでハッピーエンドでいいですね。パリ•オペラ座バレエのバール版を見るまではそう思っていました。
曲は同じものを使っているんでがね。順序は違っているみたい。
ラ•バヤデール
これもまた話だけ見ると辛気臭さい内容なんですが、バレエで見ると引き込まれていきますね。
影の王国で終わる版と寺院破壊版があってどっちも好きですが、ボリショイの動画の後にロイヤルバレエの動画を見たら花籠の踊りに違和感を感じてしまいました。
寺院破壊版にセルゲイ•ヴィハレフ版というのがあって古い動画だったのですが(ツィスカリーゼ ワガノワ校長がソロル)通常2幕に踊るパダクションが4幕に来てて、そこに死んだニキヤの霊が絡んできて音楽が怪しくなったり戻ったり、照明も暗くなったり明るくなったり、大変印象的でまともなヴィハレフ版(DVDとか)を見てみたいなとも思うのですが、マリインスキーでまだやっていますかね。やってたとしても遠くて行けないけどね。
ら•バヤデールは影の王国で影たちが去ったあとソロルがニキヤを追いかけ、そこにニキヤが現れる、悲劇的で激しい演奏から一転バイオリンによる安らかな演奏に移るところが好きで、良く動画で見ています。
ジゼル
自分の最初の頃のバレエの印象は、チャイコフスキーから入ったこともあり、煌びやかな、豪華な衣装や舞台装置の中で踊るというものでしたから、ジゼルを初めて見た時の、舞台装置の素朴さ、衣装の素朴さ、第二幕のウィリーの世界の辛気臭さに馴染めず、なんでこれがロマンバレエ作品の名作なのかと思いましたが、バレエ系Youtuberの話やググって調べたりしていくうちに、作品の真の意味がわかってきて、自分もその名作の意味に納得しました。
特にジゼルが明け方墓に戻る際に手渡す花一輪は哀愁感漂うものがあり、せり下がり機で降りてゆくジゼルが顔と手だけが残った状態で花を手渡しそのまま消えていく情景は涙なしにはみられません。この情景はまだYouTube動画でしかみたことがなく、日本国内でせり下がりで墓に消えるジゼルが見られるのか、興味のあるところです(少なくとも東京文化会館にはないようです)。
こうなると、ウィリーの女王であるミルタにも「よほど辛い死に方をしたんだろうな」と同情してしまい「存分に踊ってくれ」と応援したくなります。